自閉スペクトラム症の子どもと表情を確かめる——ペルー・スペインで試した小型ロボットJARI

画面の顔、身体の色、首の動きで気持ちを表す小型ロボットがあります。JARIは、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもとのやりとりを目指して開発された試作機です。ペルーとスペインの学校では、子どもが表情を見分けたり、触れたりする様子を調べました。
どの動物かを決めない、触れられる姿
JARIは高さ28cmで、動物を思わせながらも、犬や猫など特定の動物には似せない外観です。研究チームは、動物への苦手意識や、人に似せすぎた姿への違和感を避けることを意図しました。耳などには柔らかな素材を使い、色や手触りの異なる服に着せ替えられます。外観の選択は設計上の狙いで、別の形のロボットと比較して優劣を確かめたものではありません。
顔の画面、身体のLED、首や車輪の動きを組み合わせて表情を示します。例えば「うれしい」表情には黄色の光を使いました。触れたくなる姿と、表情を見やすくする仕組みを一つの身体にまとめたロボットです。

引用元PDF:Design of JARI: A Robot to Enhance Social Interaction in Children with Autism Spectrum DisorderEricka Patricia Madrid Ruiz, Héctor Hugo Oscanoa Fernández, Cecilia E. García Cena, Raquel Cedazo León / Machines 2025, 13, 436/正式出版版・2025-05-21
Figure 3 / 物理8頁(印刷8頁)元PDF取得(UTC):2026-10-14 / 原図画像化(UTC):2026-10-17(原PDFの忠実な画像化)原PDFの連続領域を200dpiで画像化。全機体/操作画面・原図題・ラベルを保持。文字/数値/配置の変更なし、表示WebPへの可逆変換のみ。© 2025 by the authors. 原論文の条件:CC BY 4.0。本記事では図の構造と操作を説明するために引用しています。
図を原寸で確認する(図の中を横に移動できます)

反応を選んでいたのは、背後の研究者
実験では、研究者がウェブ画面からロボットを遠隔操作しました。これはWizard of Ozと呼ばれる方法で、自動で動いているように見える反応を、人が操作して試すものです。JARIが子どもの気持ちや物体を自律的に判断していたわけではありません。

引用元PDF:Design of JARI: A Robot to Enhance Social Interaction in Children with Autism Spectrum DisorderEricka Patricia Madrid Ruiz, Héctor Hugo Oscanoa Fernández, Cecilia E. García Cena, Raquel Cedazo León / Machines 2025, 13, 436/正式出版版・2025-05-21
Figure 6 / 物理10頁(印刷10頁)元PDF取得(UTC):2026-10-14 / 原図画像化(UTC):2026-10-17(原PDFの忠実な画像化)原PDFの連続領域を200dpiで画像化。全機体/操作画面・原図題・ラベルを保持。文字/数値/配置の変更なし、表示WebPへの可逆変換のみ。© 2025 by the authors. 原論文の条件:CC BY 4.0。本記事では図の構造と操作を説明するために引用しています。
操作画面部分を原寸で拡大する(図全体と図題は直前に掲載)
子どもは玩具や食べ物などをロボットに見せ、操作者が決められた表情を選びました。研究者は、その顔がどの気持ちを表しているかを尋ねます。言葉での回答に加え、感情を表す絵記号を選ぶ方法も使いました。ロボットへの反応を、発話だけで捉えない進め方です。
二つの学校で見られた反応
2025年5月に『Machines』へ掲載された正式論文では、ペルーのリマで6〜8歳の11人、スペインのマドリードで5〜12歳の7人を調べています。論文はいずれもASDと診断された子どもと説明しています。ペルーでは個別に、スペインでは小集団で実施しました。ペルーの11人中8人は非言語のコミュニケーションを用い、絵記号による回答を研究者が補助しました。
提示された表情と一致する回答が両場面で得られました。ただし、ペルーでは途中から返答しなくなる子どももおり、すべての質問に全員が答えた結果ではありません。黄色などの色の好みも尋ね、動画では顔を見つめる、身体や耳に触れる、笑顔を見せるといった行動を記録しました。行動の記録回数は、その行動をした子どもの人数とは別です。
スペインの終了後の質問では、「JARIとまた遊びたい」「JARIは面白い」といった回答が多く見られました。今回調べたのは、その場での受け止め方や表情の識別です。対照群や支援前後の能力比較はなく、対人場面の感情理解が改善したという結果ではありません。表情の示し方だけでなく、子どもが答える手段を組み合わせた試作の研究です。
この記事のまとめ
- 表情を示す小型ロボットを、学校で試作・評価した
JARIは画面・色・首の動きで表情を示す試作機です。ペルーとスペインの学校で、研究者が遠隔操作し、ASD児の回答や反応を調べました。
- 発話だけで参加を求めない対話の設計が手がかりになる
言葉や絵記号による回答を受け止め、機器への関わり方を観察した点に意義があります。自律AIの療育効果や、人の支援を代替する効果の証明ではありません。
- 日本の状況と比べると
日本の自閉症の教育支援資料も、本人の状態や関心に合わせて支援を考えます。この試作ロボットの仕様・操作体制を、日本でそのまま導入できるとする資料ではありません。
日本の参考資料:文部科学省:教育支援の手引・自閉症 - 日本で参考にするなら
ロボットの見た目だけでなく、回答の選択肢、操作者の役割、本人が関わりたいかを比べる観点が参考になります。
日本の制度・資料の確認:2026年11月2日。
出典
Design of JARI: A Robot to Enhance Social Interaction in Children with Autism Spectrum Disorder
原典日:2025-05-21 / 取得:2026-10-14
画像について
冒頭の線画は、画面から機器を操作する仕組みのイメージです。JARIの実物や実際の操作画面は、本文中の原論文の図をご覧ください。



